年収は高いのに、手取りが思ったより少ない。そう感じているなら、まず確認したいのが自分で手続きしないと適用されない控除を使い切れているかどうかだ。
基礎控除・給与所得控除・配偶者控除は、何もしなくても自動的に反映される。ここで取り上げるのは、それとは別の話だ。自分で動いて初めて効く6つの節税方法を、年収1000万・1500万・2000万の3帯で具体的な金額を出して比較する。
私自身も再受験前からお金まわりは自分で調べる癖がついていて、医師になってからも一次情報(国税庁・総務省)で数字を確かめながら手続きしてきた。効果のあるものを紹介するが、ピットフォールも記載する。
この記事でわかること
- 自分の年収帯(1000万・1500万・2000万)で各節税方法が実際にいくら効くか
- ふるさと納税・iDeCo・住宅ローン控除など6つの節税方法のピットフォール
- 6つの節税方法の優先順位(効果の大きい順で)
前提
節税効果額は、すべて「独身または共働き(配偶者控除・扶養なし)、他の任意控除を併用しない」給与所得者という条件で試算している。
各節税方法同士が互いに干渉することがある。たとえば、iDeCoや医療費控除で課税所得が下がると、ふるさと納税の上限もわずかに下がる。ここでの各方法の節税効果額は他の控除を受けていない前提で出している。
限界税率(次に増える1円にかかる税率)は次のとおり。
- 年収1000万:所得税20%+住民税10%+復興特別所得税 = 30.42%
- 年収1500万・2000万:所得税33%+住民税10%+復興特別所得税 = 43.69%
1500万と2000万は同じ所得税率のブラケット(33%帯)に収まるため、節税額が一致する節税方法が多い。
① ふるさと納税|実質2,000円の自己負担で、返礼品分がそのまま得になる
年収2,000万なら約57万円を寄附して自己負担は2,000円。まず試すべき節税方法だ。
仕組みは税の振り替えだ。本来、国・地方に納める税のうち2,000円を超えた分を、選んだ自治体への寄附に変える。その代わり返礼品(上限は寄附額の約30%)が届く。節税というよりは、任意の自治体に寄付することで返礼品を受け取ることができる制度である。
節税効果額
| 年収 | 上限寄附額(目安) | 返礼品の価値(目安) | 実質負担 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 約18万円 | 約5万円相当 | 2,000円 |
| 1,500万円 | 約39万円 | 約12万円相当 | 2,000円 |
| 2,000万円 | 約57万円 | 約17万円相当 | 2,000円 |
年収2,000万で約57万円を寄附すれば、返礼品の価値は最大で約17万円相当になる。
上限寄附額の約30%が返礼品価値の上限。年収2,000万では実質負担2,000円で約17万円相当の返礼品を受け取れる計算になる。
Dr.マコト・勤務医
「税が減る」とよく言われるが、正確には「税の払い先が自治体に変わって、そのぶん返礼品が届く」。手元の出金は2,000円だが、返礼品という形で価値が戻ってくる。
Dr.マコト・勤務医
私も毎年この枠はほぼ上限まで使っている。実質2,000円で返礼品が届くのだから、使わない理由がない。手続き自体もワンストップ特例があれば確定申告不要で済む。
注意点
2025年10月から、楽天・ふるさとチョイス等の仲介サイトが付与するポイント還元が禁止された。「ポイント二重取り」はもう使えない。
もう一点。返礼品を含む「一時所得」が年間50万円を超えると、超えた部分に課税される。年収2,000万帯で複数の高額返礼品を受け取る場合は注意が必要。
確定申告が必要な勤務医(バイト収入がある場合)は、ワンストップ特例が使えない。確定申告時に寄附金控除として入力することになる。詳しくは確定申告の手順にまとめている。
② iDeCo(個人型確定拠出年金)|「手取りが増える」ではなく「安く老後資金を積む」方法
年収1,500万で年12.1万円の節税。ただし、手取りが増えるわけではない。この点を最初に押さえておく。
iDeCoは拠出した分が手元から出ていく。その代わり、拠出額が全額、小規模企業共済等掛金控除として所得控除になる。年収1,500万の場合、27.6万円の拠出に対して12.1万円の税が安くなる。実質負担は15.5万円(27.6万円-12.1万円)で、同額の老後資産を積んでいる計算だ。
節税によって、その分割安に老後資金に投資できる方法と考えるのが正確だろう。
節税効果額(現行・月2.3万円=年27.6万円拠出の場合)
| 年収 | 節税額(年間) |
|---|---|
| 1,000万円 | 8.4万円 |
| 1,500万円 | 12.1万円 |
| 2,000万円 | 12.1万円 |
節税額の分だけ「老後資金の積み立てコストが下がる」節税方法。手取りは増えないが、実質負担を抑えて資産形成できるという見方が正確。
Dr.マコト・勤務医
iDeCoを「節税策」として紹介している記事が多いが、手取りが増えるわけではない。私は老後資金として位置づけて、60歳まで引き出せない前提で金額を決めている。「引き出せない分だけ安くなる」と覚えておくといい。
上限は勤務先の制度で変わる
月2.3万円(年27.6万円)は、勤務先に企業年金がない場合の上限だ。
- 企業型DC(企業型確定拠出年金)やDB(確定給付企業年金)がある場合、iDeCoの上限は月2.0万円に下がる
- さらに事業主掛金との合算で月5.5万円の枠に収める必要がある
- 勤務先がマッチング拠出を採用していて、それを使っている場合はiDeCoとの併用はできない
自分の上限は勤務先の制度で変わる。まず人事・総務に確認するのが先決。
予告:2026年12月施行予定の上限拡大
2026年12月に制度改正が施行予定。企業年金なし第2号の上限が月6.2万円(年74.4万円)に一本化される見込み。
施行後の節税額の目安:年収1,000万で約22.6万円、年収1,500万・2,000万で約32.5万円。
ただし「施行予定」であり、金融機関各社も「実施時期は未確定」と注記している段階。本記事の試算は現行の年27.6万円ベース。
注意点
60歳まで原則引き出せない。医師になってまもない年代では、長期の資金ロック(引き出せない)のリスクと節税のメリットをセットで考える必要がある。運用リターンは保証されず、商品選びによって結果が変わる点も忘れずに。
③ 医療費控除|10万円の壁がある。大きく出た年だけ効く
結論から言う。勤務医でも、医療費控除が使えるのは「医療費が年10万円を超えた年」だけだ。
仕組みは「年間の医療費から10万円を引いた額が控除になる」。医療費15万円の年なら控除額は5万円、そこに限界税率をかけた金額が節税額になる。
医療費15万円の年の節税額:
- 年収1,000万:約1.5万円
- 年収1,500・2,000万:約2.2万円
インプラント等の高額医療を受けた年には使えるが、大きな持病のない勤務医が毎年コンスタントに使える節税方法ではない。
閾値は年間医療費10万円。上限は200万円。家族の医療費は合算できる。「高額医療費控除」という制度名は存在しない(高額療養費制度と混同しやすいので注意)。
Dr.マコト・勤務医
「高額療養費」は健保の給付制度で、「医療費控除」は税の申告制度。まったく別の話なのに混同している記事が多い。医療費控除は確定申告で初めて使えるもので、自動的には適用されない。
注意点
控除できる医療費の上限は200万円。家族分は合算できる。ただし、保険金・給付金で補填された部分は対象医療費から差し引く(受け取った保険金を限度として)。
出産費用もこの制度の対象になる(健康保険が効くかどうかと、医療費控除の対象かどうかは別の話)。ただし出産育児一時金(原則50万円)を差し引くため、一般的な分娩費用では控除に残る部分は小さくなりやすい。
④ 住宅ローン控除|税額がそのまま減る。ただし所得要件に落とし穴がある
年21〜31.5万円の節税が13年間続く。そして年収帯によらず効果額が一定というのが、この節税方法の大きな特徴だ。
他の節税方法は所得控除、つまり課税所得を減らして税を下げる仕組み。住宅ローン控除は税額控除で、計算後の税額から直接引く。だから高年収でも低年収でも、控除額は変わらない。控除額は年末のローン残高×0.7%で計算される。
節税効果額(2025年入居・新築・一般世帯の場合)
| 対象 | 年間の控除額 |
|---|---|
| 認定住宅(長期優良・低炭素) | 31.5万円(13年間) |
| 省エネ基準適合住宅 | 21万円(13年間) |
税額控除なので年収帯を問わず効果額は一定。ただし合計所得2,000万円超の年は対象外。給与のみなら年収約2,195万円超で失格となる。バイト収入が加わる勤務医は特に要注意。
注意点①
住宅ローン控除には「合計所得金額が2,000万円以下」という所得要件がある。
給与収入だけなら年収約2,195万円超で合計所得が2,000万円を超え、住宅ローン控除そのものが対象外になる。年収2,000万帯はギリギリ使えるラインだが、バイト収入が加わる勤務医は合計所得が2,000万円を超えた年に控除が一切受けられなくなる。
注意点②
所得税で引ききれない分は住民税で一部控除できる(課税総所得×5%、最高9.75万円)。ただし年収が高いほど所得税だけで引ききれることが多く、住民税への繰り越しはあまり関係しない。
⑤ 生命保険料控除|複数の保険があれば確実に使える。節税目的では入らない
3区分すべて満額払込なら、年収1,500万・2,000万で約4.7万円の節税になる節税方法だ。ただし節税のために保険へ入るのは本末転倒なので、その点は最後に触れる。
生命保険料控除は「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3区分に分かれる。
- 所得税:各区分で最大4万円の控除(合計最大12万円)
- 住民税:各区分で最大2.8万円の控除(合計最大7万円)
- 各区分の満額条件:年8万円以上の保険料払込
節税額は所得控除なので、限界税率をかけた額が効果になる。
節税効果額(3区分すべて満額払込の場合)
| 年収 | 節税額(年間) |
|---|---|
| 1,000万円 | 約3.1万円 |
| 1,500万円 | 約4.7万円 |
| 2,000万円 | 約4.7万円 |
年収1,500万の計算内訳:所得税控除12万円×33%+復興分+住民税控除7万円×10%=約4.7万円。
3区分それぞれで年8万円以上払い込んでいる場合に満額控除。条件を満たしていれば、確定申告(または年末調整)で漏れなく入力するだけでいい。
Dr.マコト・勤務医
節税のために保険に入るのは目的と手段が逆転している。4.7万円の控除を得るために本来不要な保険に年間24万円支出するのは筋が悪い。あくまで必要な保険に入ったうえで得られる節税策と捉える方がよいだろう。
注意点
この効果を得るためには、3区分それぞれで年8万円以上の保険料を払っている必要がある。条件を満たしていない場合、効果額は比例して小さくなる。
すでに保険料を払っているなら、確定申告(または年末調整)で漏れなく入力すること。書類を手元に置いておけば、あとはそれを転記するだけだ。
⑥ 特定支出控除|制度はある。だが大半の勤務医には使えない
はっきり言う。大半の勤務医には使えない。最後に置いたのはそのためだ。
給与所得者が職務上の支出を経費として認めてもらう「特定支出控除」という制度がある。通勤費・転居費・研修費・書籍購入費・交際費などが対象になりうる。
ただし、控除が受けられるのは「実際に支出した特定支出の合計が、給与所得控除の半分(97.5万円)を超えた場合」に限られる。
勤務医の給与所得控除は上限195万円で固定。その半分=97.5万円超の特定支出が必要。研修費・書籍代を積み上げても、この水準を超えることはほぼない。
Dr.マコト・勤務医
高所得勤務医ほど給与所得控除が上限の195万円で固定されているため、この制度の壁がむしろ高くなる構造になっている。「経費で節税」という発想が自営業と混同されやすいが、給与所得の勤務医には基本的に当てはまらない。
特定支出控除が使えないことが多い理由
- 控除が効くのは「特定支出の合計 > 97.5万円」の部分だけ
- 勤務医の給与所得控除は上限の195万円で固定
- 研修費・書籍代を積み上げても、この水準を超えることは現実的でない
6つの節税方法まとめ
| 節税方法 | 年収1000万 | 年収1500万 | 年収2000万 |
|---|---|---|---|
| ふるさと納税(上限寄附額) | 約18万円 | 約39万円 | 約57万円 |
| iDeCo(年27.6万円拠出) | 8.4万円 | 12.1万円 | 12.1万円 |
| 住宅ローン控除(認定住宅) | 31.5万円 | 31.5万円 | 31.5万円 |
| 住宅ローン控除(省エネ適合) | 21万円 | 21万円 | 21万円 |
| 生命保険料控除(3区分満額) | 約3.1万円 | 約4.7万円 | 約4.7万円 |
| 医療費控除(医療費15万の年) | 約1.5万円 | 約2.2万円 | 約2.2万円 |
| 特定支出控除 | ほぼ使えない | ほぼ使えない | ほぼ使えない |
6つの節税方法の優先順位(効果の大きい順で)
やることが決まっているなら、効果の大きいものから動くのが合理的。
ふるさと納税は今日からでも使える。iDeCoは口座開設に1〜2か月かかるので早めに動いたほうがいい。住宅ローン控除は物件購入済みなら、初年度だけ確定申告が必要なことを忘れずに(2年目以降は年末調整で対応可能)。
確定申告の手順は確定申告の手順記事を、バイト収入が加わるときの税の仕組みはバイト代の確定申告記事を参照してほしい。
今の自分の手取りと節税方法を入れたらどうなるかを確認したいなら、手取りシミュレーターで一度試してみてほしい。年収と各節税方法の組み合わせで数字がすぐ出る。
節税には上限がある。
ふるさと納税もiDeCoも、どれだけ積み上げても年収の数%が上限だ。根本の年収を動かす以上には、なかなか効かない。節税は「手取りを最大化する工夫」として使いながら、働き方そのものとも向き合う。それが最終的には近道だと思っている。節税を含めた手段の比較は4つの鍵の全体像で扱っている。
手取りの構造と年収帯ごとの手取り額は年収別 手取り早見にまとめているので、合わせて参照してほしい。
本記事は2026年6月時点の情報をもとにした一般的な情報提供を目的としたものです。税制は年度ごとに改正される場合があります。個別の税務判断については税理士等の専門家にご相談ください。
著者:勤務医 Dr.マコト