結論
年末調整は主たる給与の支払先で行う。主たる給与以外(従たる給与)は原則として年末調整されない。だから2か所ぶんを合算した最終的な精算は、勤務医自身の確定申告で行うことになる。これは国税庁タックスアンサー No.2520 が示す仕組みである。
本院の給与に加えて、外勤やバイト先からも給与が出る。複数の勤務先から給与を受け取っている勤務医は多い。このとき年末調整はどの勤務先で行うのか。順に整理する。
主たる給与と従たる給与とは
給与の源泉徴収では、勤務先が2つの区分を使い分ける。
主たる給与とは、給与所得者の扶養控除等申告書を提出している勤務先から受け取る給与をいう。この勤務先の源泉徴収は、税額表の甲欄で計算される。
従たる給与とは、主たる給与の支払先以外の勤務先から受け取る給与をいう。この勤務先の源泉徴収は、税額表の乙欄で計算される。
扶養控除等申告書は1つの勤務先にしか提出できない。複数から給与を受け取る勤務医の場合、申告書を出した1か所が主たる給与(甲欄)、それ以外はすべて従たる給与(乙欄)になる。どの勤務先を主たるにするかは、通常は本院など給与が最も大きい勤務先を選ぶ。
なぜ主たる給与先だけで年末調整するのか
年末調整は、その年に源泉徴収した所得税を、勤務先が年末にまとめて精算する手続きである。この手続きが行われるのは、扶養控除等申告書を提出している主たる給与の勤務先に限られる。
従たる給与の勤務先は、原則として年末調整を行わない。国税庁 No.2520 も、従たる給与については原則として年末調整できないため、本人が確定申告することにより所得税および復興特別所得税の精算を行う必要がある、と明記している。
理由は仕組みの側にある。年末調整は扶養控除などの人的控除を反映して精算するが、その基礎になる扶養控除等申告書は1か所にしか出せない。申告書のない勤務先では、控除を織り込んだ年末の精算ができない。だから年末調整は主たる給与の勤務先で1回だけ行われる。
ここまでで言えること、言えないこと
No.2520 が示すのは、従たる給与は原則として年末調整されないという点までである。従たる給与の勤務先が年末調整をしてくれない以上、2か所ぶんを合算した本当の税額は、その年の途中では誰も精算していない。
ここに落差が生まれる。乙欄の源泉徴収は、甲欄よりも高めに引かれる設計になっている。従たる給与からは多めに天引きされたまま、年末調整という精算の場を通らない。合算後の正しい税額との差は、勤務医自身が確定申告をして初めて精算される。多く引かれていれば還付、本業と合算して税率が上がる場合は追納になる。
Dr.マコト・勤務医
確定申告が必要かどうか、税額がいくらになるかは、収入構成や控除の状況で変わる。No.2520 の射程はあくまで源泉徴収と年末調整の仕組みまで。個別の判断は所轄の税務署で確認してほしい。
引かれすぎに見えるのはなぜか、いくら戻るのか
従たる給与から多めに引かれる仕組みと、実際にいくら戻る(あるいは足りない)のかは、別記事で実額とともに整理している。バイト代が額面より大きく減って見える理由と、本業の年収帯によって還付か追納かが分かれる構造は、バイト代が引かれすぎに見える理由(乙欄還付)で詳しく扱っている。
2か所ぶんを合算すると手取りが最終的にどうなるか。それを左右する一番大きな要素は、本業の限界税率である。合算後の手取りを自分の数字で試算したいなら、複数勤務先の手取りシミュレーターで額面から手取りまでを計算できる。
よくある質問
2か所から給与をもらっている勤務医は、年末調整だけで納税は完了するか
完了しない。年末調整が行われるのは主たる給与の勤務先だけで、従たる給与は原則として年末調整されない。国税庁 No.2520 は、従たる給与は本人が確定申告することにより所得税および復興特別所得税の精算を行う必要があるとしている。2か所ぶんを合算した精算は確定申告で行う。
主たる給与と従たる給与は、どうやって決まるか
給与所得者の扶養控除等申告書を提出している勤務先が主たる給与(甲欄)、それ以外の勤務先が従たる給与(乙欄)になる。申告書は1か所にしか提出できない。
本記事は令和8年分の制度にもとづく一般的な情報である。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署で確認してほしい。出典:国税庁タックスアンサー No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収(令和7年4月1日現在法令等)。
著者:勤務医 Dr.マコト