常勤で働く医師が給与を240万円増やすなら、道は2つ。バイトを増やすか、常勤先の年収を上げるか。
もとの常勤が1,000万円の試算では、バイトで増やす方が年間の手取りは88,440円多い(賞与なし・バイトに社会保険なしの前提)。ただし差は年収が上がるほど小さくなる。
手取りや通勤・残業・当直まで含めた自分の時間が、バイトや常勤先を変更することでどう変わるのか比較する。
どちらの手取りが多いか
年収を240万円増やそうとした場合、もとの常勤が1,000万円・1,500万円・2,000万円のどの水準でも、バイトを増やした方の手取りが多い。 基本的に同じ年収であればバイトの比率が高いほど手取りが多くなることが多い。 ただし差は年収が上がるほど小さくなり、2,000万円では年5,899円になる。ここまで来るともはや大きな差ではない。
一方、時間の問題も無視できない。
年収の水準で差はどう変わるか
今の常勤先の年収から、240万円多く稼ぐ。Aはバイトで稼ぎ、Bは常勤先の年収を増やす。もちろん、額面の合計はどちらも同じになる。
| 比べる2つの働き方(額面の合計は同じ) | 年間の手取りの差 |
|---|---|
| 常勤1,000万+バイト240万 vs 常勤1,240万・バイトなし | バイト側が88,440円多い |
| 常勤1,500万+バイト240万 vs 常勤1,740万・バイトなし | バイト側が54,432円多い |
| 常勤2,000万+バイト240万 vs 常勤2,240万・バイトなし | バイト側が5,899円多い |
3つともバイト側の方が手取りが多いが、年収が上がるほど差は小さくなる。
試算の条件:令和8年分の税制・賞与なし・東京都・独身(配偶者・扶養なし)・40歳未満・任意の控除なし。バイトは給与扱いで、健康保険と厚生年金に加入しない前提。年額の比較で、住民税の翌年の増加分も手取りから引いてある(初年度に口座に入る額の比較ではない)。
この差の正体は社会保険料である。 バイト先では基本的に社会保険に入らないため、Aでは社会保険料が増えない。Bでは常勤先の月給が上がるので、健康保険料(子ども・子育て支援金を含む)と雇用保険料が増える。厚生年金は1,000万円の時点で上限に達しているので、3つの水準とも増えない。内訳は次の表のとおり。
| もとの常勤の年収 | 社会保険料の差 | うち税で戻る分 | 手取りの差 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 132,960円 | 44,520円 | 88,440円 |
| 1,500万円 | 96,672円 | 42,240円 | 54,432円 |
| 2,000万円 | 12,000円 | 6,101円 | 5,899円 |
社会保険料は全額が所得控除になるので、多く天引きされた分だけ所得税や住民税が少なくなる。社会保険料の差から、この税の減り分を引いた金額が、手取りの差になる。
年収が上がるほど差が縮む理由は、厚生年金に加えて健康保険料も標準報酬の上限に達するからだ。2,000万円では常勤先の年収を240万円上げても健康保険料は増えず、上限のない雇用保険料だけが増額される。
注意:バイト先で社会保険に入る条件(週の労働時間など)に該当する場合は、報酬を合算して計算し直す必要がある。とはいえ、週20時間以上の労働などの複数の条件を満たす場合にのみ社会保険に加入する義務があるため、標準的なバイトでは該当することはほとんどないだろう。転職先の健康保険の料率や、月給と賞与の配分が変わる場合は、常勤アップの側が上回ることもある。
自分の時間はどう変わるか
手取りの差が数万円程度であれば、手取りを追求するよりも自分自身の時間を考慮しても良いかもしれない。
バイトを増やす方は、拘束が確実に増える。年240万円を当直やバイトで稼ぐ場合、その分の夜や休日の時間を仕事に使うことになる。常勤先の年収が上がる転職は、拘束時間の増減は条件次第だ。同じ業務量で年収が上がる職場もあれば、当直や呼び出しが増える職場もある。もちろん減ることもある。
また、以下の点にも留意する必要がある。
- バイトは増減しやすい。 医局からの紹介案件の場合はその限りではないかもしれないが、常勤先の勤務条件と違って、比較的早期に回数を増やしたり減らしたりできる。この身軽さは時給には出ない利点で、時間の比較に入れておく価値がある。
- 常勤先の年収アップは責任やオンコールが増えることがある。 拘束時間には数えにくい負荷(管理業務、オンコールの心理的な縛り)は、単純な労働時間とは別に考慮する必要がある。
- 時給が良くても、専門医や指定医の症例が集まらない転職は筋が悪い。 手取りや自分の時間のために、専門性を犠牲にしてよいかという問題がある。これについては転職の考え方の記事で扱っている。
自分自身の条件で比較するには
自分の条件で入力してみるのが、いちばん早い。転職シミュレーターに、今の職場と候補の条件(常勤先の年収・当直の月回数・バイトの年収・残業の月平均時間)を入れると、次の3行が表示される。
- 年間の手取りの差
- 年間の拘束時間の差(当直1回の拘束時間は変えられる)
- 手取り1時間あたりの差
同じ額面の増え方でも、手取りや自分の時間はまちまちである。正確な数字を出して、比較して、今後どうするかを決めればよいだろう。
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